アスペルガー医師ロンの日常

医師でもあり、アスペルガー症候群当事者でもあり、更には911GT3&ロードスター乗りでもあるワタクシのささやか(?)な日常

BACK TO THE ROCKETS!!

 約2年ぶりに親父に会った。親父とは病気のことで一度険悪になって以来まともにあって話をしていない。今回、T会関係の仕事で東京にやってきたのでT会の副理事長のM氏が「一緒に食事をしよう」との事だったのでM氏の顔を立てて行くことにした。

 正直、警察沙汰も覚悟していた。親父は人の話を聞かず、一方的に自分の意見だけを並べ立て、反論=自分に対する反乱と考えるような人間である。しかも始末が悪いことに嫌味と悪口の才能は天下一品である。母の話によると、ここ数年は年を取ってきたせいか益々頑固になり、この性格が顕著になってきたとの事。最悪の場合、互いにキレ合って血を見るような事態になってしまうかも知れない。

 そう考えワタクシはありとあらゆる罵詈雑言を想定し、冷静になるように勤めてきた。上記の特徴に加え、親父は負けず嫌いで執念深い。ヘタに逆らった所で泥沼化するだけである。ドルトン・トランボの「ジョニーは戦場に行った」ではないが、たとえ足腰立たなくして口も手も使えないようにしても、あの手この手で反撃してきそうである。殺したら、それこそ化けて出てきそうな人である。が、今日は思いのほか上手く切り抜けることが出来た。

 M氏は日本でも有名な医療団体T会の副理事長、肩書きは伊達じゃない。会ってそんなに時間が経ってないのにもう親父がどんな人間かを見抜き、上手く操っている。相手の上に立ったつもりでデカい態度を取っている親父を上手い具合に乗りこなしている。まるで言葉のロデオである、上手い具合に煽てて持ち上げて、それでもって話の主導権をきっちり握っている。まるで政治家である・・・って言っても、それに近いようものだが。

 このM氏の話術がまた一級品。話は主に如何に自分達T会と理事長のT氏が素晴らしいか、如何に自分達が世界に貢献しているかといった自分達の宣伝なのだが、ここで親父の悪い癖が始まる。「これ(ワタクシを指して)の母親は・・・」と早くもメシが不味くなる様な話をし始め、ワタクシの目つきが変わったのを察知したM氏は素早く話に割り込み、自然な形で話を別の方向に逸らす。しかもただ逸らすのではなく、上手い具合にまた自分達の宣伝話に引き戻す。この話術テクはハッキリ言って神業モンである。

 こうして会話の主導権はM氏が握ったまま、良いように煽てられた親父がふんぞり返って得意げに話すといった状態が続いた。ワタクシはといえば聞き手に回っていたのだが、性懲りもなく親父がワタクシ自身や、その他の人などについてメシの不味くなるような話を始める度にM氏が割り込んで、上手く逸らして、そしてまた自分の話に戻す。おかげで流血の事態も警察沙汰も避けられて、美味くメシも食えて万々歳である。知らぬは親父ばかりである「あの副理事長はオレにビクついてる」などと得意げに話すが、自分がロデオ馬の様に上手く乗りこなされているのが分かっていないのだろうか。まぁ、ここはワタクシの出る幕ではないのでイグノランス・イズ・ブリスという事にしておくとしよう。

 親父を贈った後のタクシーの中で、M氏に「親父の事を良く分かってますね」と褒め言葉も含めて言ってみたのだが上手い具合にかわされた。なんとか話をしてみようと試みるが、主導権が奪えない。この方、良い意味でも悪い意味でも相当のタヌキである。恐らくワタクシの事も、ワタクシと親父がどんな関係にあるのかも見抜かれている。あとは親父が知らず知らずの間に化かされたりはしないか、と一応息子として心配してしまう今日この頃であった。