アスペルガー医師ロンの日常

医師でもあり、アスペルガー症候群当事者でもあり、更には911GT3&ロードスター乗りでもあるワタクシのささやか(?)な日常

KINGS OF BEER

 ロンマニアの皆様、こんにちはm(_ _)m


「精神のバランスが崩れるのは機能性、利便性、経済効率、そればかり基準にするから。精神の健康を保つのは美意識」

By 美輪明宏


 といった今日この頃、皆様はどうお過ごしでしょうか。


*二次元と三次元の間に隔たる壁

 映画を観る度に何時も思うのである。何故アメコミ(及び欧米の二次元)の実写映画化は上手く行って、ニッポンの二次元は失敗しやすいのか、と。ワタクシが思うに、ソレは欧米とニッポンの間にある、二次元の捉え方の違いではないかと思うのである。欧米の二次元作品のキャラクターってのは基本的に三次元をベースにしてるのに対し、ニッポンの二次元は完全に三次元と切り離されているのである。欧米の二次元キャラは三次元の役者をそのまんま使えるか、若干の特殊メイクやSFXを用いれば容易に再現できる。が、ニッポンの二次元はそうではない。目の大きさ、髪の色、年齢不相当な体格だけならまだ序の口。敢えて三次元じゃあり得ないデッサンをする人だってザラなんだから、三次元じゃリアルに再現できない→必ず「コレじゃない」ていう人が出てくるからである:

欧米のアニメやマンガを実写化

三次元に忠実なデッサンをしてるから、キャラにあった俳優と特殊技術があれば余裕

観客もキャラクターに愛着が湧き、映画がヒットする

(゚д゚)ウマー

ニッポンのアニメやマンガは余りにも三次元と乖離している

一応イメージに近い役者や特殊技術は駆使するけど、原作ファンからすると違和感は拭えない

観客もキャラクターに愛着が湧かず、映画はヒットしない

( ゚Д゚)マズー

スパイダーマン」や「アイアンマン」が実写化に成功して、逆に「ドラゴンボール」が失敗したのは、そーゆー事だとワタクシは思うのである。孫悟空のあの顔と髪の毛と体格を三次元で再現するなんてムリがあり過ぎるし、いくら良く似た童顔でハゲな役者探してきたって「八頭身のクリリンなんてあり得ねぇ!」ってなるワケである(笑)コレは別にどっちが優れてるかという事ではなく、単純に実写化に向いてるか否かだけの事である。向いているからと言って優れてるワケでもなく、その逆もまた然りである。


*神速の三次元

 というのが、ワタクシが【実写版るろうに剣心】を見る前に抱いていた懸念であるが、その懸念は良い意味で裏切られたと言っておくとしよう。原作知らなくても観る価値はあるし、原作を知っているのなら尚更観る価値がある。どういう映画なのかと言うと、こういう映画である:

ワタクシの感想を一言で表すと「凄かった」である。何が凄かったかと問われたら、1つ目は「監督のセンスとバランス感覚」である。原作に偏り過ぎた作りをすると「再現できないんだったらアニメでやった方がマシ」って言われるし、逆に実写に偏り過ぎると「るろ剣の名を借りただけのチャンバラ映画じゃん」って言われてしまう。マンガやアニメの実写化はその丁度良い塩梅を取るのが難しいのであるが、ソレが見事なまでに取れているのである。どちらかと言うと実写に偏った作りになっていて、何ちゅーか「もしも緋村抜刀斎と飛天御剣流がリアルに存在していたら、こんな感じの剣術や闘法になっただろうな」というイメージを膨らませ、原作の飛天御剣流をベースにしながらも、決して三次元の許容範囲を超えない。確かに原作通りの戦闘シーンの再現は無いが、逆にソレが実写化という枠の中では非常に良く出来た作りになってる。その絶妙なバランス加減が(・∀・)イイ!!のである。


 あと映画内の細かい演出も中々である。何ちゅーか「もしも和月伸宏がメガホンを握ったら」的な演出が所々にあって、作中に時折出てくるギャグなんかは正に和月伸宏のセンスそのものなのである。てゆーか、クレジットこそ無いが口出してるだろ和月(笑)あと原作読んでる人にとっても「あ"( ̄□ ̄;)このシーンはこーゆー観せ方もあったかぁ〜」って唸らせて、原作者自身も「その発想は無かった」って演出が相当数あるのである。もうそのシーン見ただけで「この監督、原作をシッカリ読み込んでる&理解しているな」って分かるんで、一層映画への愛着が高まるのである。ソコんトコのバランス感覚は人によって違うんで何とも言えないが、少なくとも原作をリアルタイムで読んでいたるろ剣ファンのワタクシは「こういう実写化なら全然アリだ!寧ろヘタに原作を忠実に再現されるよりも遥かに(・∀・)イイ!!」という評価を下すとする。だからワタクシは「原作を知っているのなら尚更観る価値がある」と言うのである。


 2つめは「アクションとキャスティング」である。特にアクション、コレは必見である。演出こそ原作(とアニメ)とは違うが、飛天御剣流の「神速の殺人剣」「最小の動きで複数の相手を一瞬で仕留める、一対多数の戦いを得意とする剣術」っていう設定は見事に生きていて、ソレを三次元の許容範囲を超えないレベルに収めた結果、今まで観た事ないようなスピーディーでエキサイティングな殺陣シーンに仕上がってるのである。そーゆーシーンを再現するためには良いキャスティングが不可欠であり、主役の佐藤健はじめアクションやる役の人たちが良く動く事、良く動く事。よく「邦画はアクションが全然ダメ」とか言うけど、コレだったらハリウッドとか香港映画のソレと並んでも良いぐらいの出来である。ワタクシが「原作知らなくても観る価値はある」といったのは、この未体験のアクション&殺陣シーン故である。


 が、悪いトコが無かったワケではない。1つ目は「詰め込み過ぎ」である。2時間の中で原作数巻分を詰め込んだモンだから説明不足の個所が間々あって、登場人物が多過ぎるから人物描写が希薄&キャラクターの魅力を使い切れてないのである。原作ファンからすると「折角の魅力的な原作キャラたち&数々の名エピソードが勿体無い(´・ω・`)」って感じちゃうのである。ワタクシが原作知らなかったとしても、やっぱ多少端折り気味なのは拭えないのである。もう一つは「キャスティング」である。江口洋介斉藤一はギリギリ許す。蒼井優の高荷恵も薄皮一枚だがギリギリ許す。だが武井咲の神谷薫、テメーはダメだ(笑)原作の薫は「ちょっと抜けてるけど剣の腕が立ち、純朴で元気一杯な下町娘」だったのであるが、スクリーンに映っていたのは「剣どころか箸も持てそうにない、へっぴり腰でヤニ臭そうな下町娘」だったからである(爆)


*チャンバラこそ邦画の救世主

 まぁ確かに完璧だとは言えないが、ソレでも「楽しめたか?」と問われたら「楽しめた!」とワタクシは答える。ソレより何より、ワタクシはニッポン映画の新しい可能性を目にした希ガスのである。今後ニッポン映画が世界に存在を主張するとしたら、このチャンバラ路線しかないとワタクシはマジで考えているのである。ハリウッドがガンアクション、香港がカンフーアクションなら、ニッポンは殺陣アクションである。邦画が他国の映画に対してアドバンテージを取れるとしたら、ワタクシは剣術こそが最適だと思うのであり、決して萌えではない(笑)コレは「ラスト・サムライ」でトム・クルーズ真田広之が木刀試合をやるシーンである:

やっぱコレ観ると「やっぱ剣術はニッポンだわ( ´ー`)」って思ってしまうのである。トムの腰が浮き気味なのに対し、真田のソレはシッカリと腰が据わってる。トムも相当練習したんだろうけど、やっぱニッポン出身で剣術が根付いてる真田には敵わない。もしもガンアクションだったら、間違いなくコレと正反対の結果になるであろう。ワタクシの言いたい事は、つまりそーゆー事である。


 だから【実写版るろうに剣心】的なアプローチってのは、今後ニッポンの映画作りの新たな可能性を示したんじゃないかなと思うのである。ニッポン人は剣が大好きである。時代劇は勿論の事、現代劇やSFに至るまで、二次元も三次元も剣を使った作品は実に多い。今回のコレで「こういう剣技の演出方法があったんだ!」と分かれば、マンガ、ゲーム、アニメ、ラノベetc、2次元ならニッポンは世界最高峰なんだから(笑)色んな作品の実写映画化の目処が立つってモンである。でも今回のコレの批判にもあったのであるが、どうやら二次元派の人は三次元に作品を持っていかれるのは余り好きじゃないみたいなのである(^_^;)まぁオタクにとっちゃ「二次元=自分が自分で居られる場所、三次元から隔離された聖域」なのだから、神聖な二次元を侵食された気分になるのであろう(爆)ニッポンじゃ二次元作品が三次元から乖離してるのは、とどのつまりそういう事なんじゃないかなと思う今日この頃であった。