アスペルガー医師ロンの日常

医師でもあり、アスペルガー症候群当事者でもあり、更には911GT3&ロードスター乗りでもあるワタクシのささやか(?)な日常

BALLS TO THE WALL

 ロンマニアの皆様、こんにちはm(_ _)m


「名言の無い時代は不幸だが、名言を必要とする時代はもっと不幸だ」

By ユージン・ベルトルト・フリードリッヒ・ブレヒト


 といった今日この頃、皆様はどうお過ごしでしょうか。


 さて昨日の話の続きである。DCCDはマニュアルモードにすることにより、前:後のトルク配分をロック(50:50)からフリー(35:65)に自由に設定出来るのであるが、やってみるとこれが中々面白いのである。DCCDをオートにするとロック⇔フリーの間で自動的に移動して、車の挙動やドライバーの意思を各種センサーで読み取って自動的に前後トルク配分をしてくれるお利口さんなシステムなのだが、そのハイテクの干渉を敢えて避けて自分の意識するトルク配分に持って行けるというのがマニュアルモードである。正確に言うと、マニュアルモードでもクルマによる若干の制御がなされるのであるが、基本的にドライバーの意図する方向に持って行けるのである。


 で、コレをロックすると結構面白かったりする。ロックすると荷重が前寄りになりFFに近い感じになり、コーナーなんかでアクセルを踏み込んだりするとFF独特のステアリングを曲げた方向に引っ張られていく感覚が感じられるのである。で、逆にフリーにすると荷重が後ろ寄りになってFRっぽくなり、ステアリングが微妙に軽快になりコーナーでも引っ張られる感覚が減って、どちらかと言うと後ろから押される感じがするのである。で、問題は「どちらの方が良いのか」というのであるが、ワタクシが考えるに「前に乗っていたクルマに合わせてセッティングしてみたらどうよ?」って事になるであろう。前に乗っていたクルマがシルビアとかスカイラインだったらフリー寄りのセッティングにした方が運転しやすいであろうし、前に乗っていたクルマがインテグラとかセリカだったらロック寄りの方が運転しやすいであろう。


 で、ワタクシの場合だが、そもそも「前に乗っていたクルマ」自体が存在しないのである(笑)そんでもって「どっちが良いか」という疑問は中々難しいモンである。一般に4WDの場合は何をどうやってもフロントが重くなる→基本アンダーなので、どちらかと言うとFF的に操作した方が良いのではとワタクシは考えるのである。で、ここで出てくるのが「インプってFRベースのAWDだから、FR的にやった方がよくね?」という疑問である。が、色々と調べてみると、インプの駆動形式は「FRベースだけどFRじゃない」のであったりする。文章だけで説明するとややこしいので、図説を用いて説明しよう。


 まず、これが4WDで一番多い「FFベースの4WD」である。ランエボをはじめ、殆どの4WDはこのレイアウトで作られている:

エンジンやミッションをを横置きにして、リアデフを除いて全て前に置くレイアウトである。この様に重たいモンが全部前に来るので当然超フロントヘビーになる。実際、トルク配分も多くは前輪中心に配分されており、状況に応じて後輪にトルク配分されるパターンが多い。


 次は「FRベースの4WD」についてである。有名どころはGT-RアテーサE-TSであろう:

こういう構造にすることによって、FFベース4WDにありがちなフロントオーバーハングを軽減するのと同時に、ミッションを真ん中に持って行けるから、フロントヘビーである事には変わりは無いのだがFR寄りの設定になる。このシステムだとFFベースとは逆にトルク配分は基本後輪寄りになっていて、状況に応じて前輪にトルクを配分するシステムになっているのである。


 んで、最後に"トリックマスター"の駆動形式:

エンジンとミッションが縦に並んでいるからFRベースだと思われがちなのだが、実はFF用にレイアウトされたデザインなのである。そもそもの始まりは今から40年前のスバル1000誕生秘話に遡るのである。今ではファミリーカー≒前方横置きエンジンのFFが一般的になっている。FFだとメカ類は全部ボンネットに持って行けるから、その分居住空間が広く取れる。それに加えFFだと前輪がグリップしている限りはアクセルを踏めばステアリングを曲げた方向にクルマが進んでいくから扱いやすくて、何分ファミリーカーとしてはもってこいである。


 が、それらは電子デバイス等の技術が進歩した現在だから成し遂げられた事なのであり、スバル1000が登場した1960年代には電子デバイスの「デ」の字も無かったのだから、純粋に構造設計で勝負するしかない。で、その中で左右バランスを取れるレイアウトを実現させるため誕生したのが縦置きエンジン&ミッションのFFなのである:


んで、前輪を駆動させているドライブシャフトにセンターデフを組み込んで、更にそれを後輪まで伸ばすとあら不思議、4WDの完成である。



これがスバル独特のいわゆるシンメトリカルAWDというシステムであり、アウディのクワトロ・システムも実は似たような構造なのである。


 つまり、インプをはじめレガシィフォレスターに搭載されているシンメトリカルAWDというのは実は「エンジン&ミッション縦置きのFFベース4WD」という何ともややこしいシステムなのである。実際、1.5Lインプにある2WDグレードはホントにFFなのである(因みに、レガシィフォレスターは全車種AWD)というワケで、FF的に走れば良いのかFR的に走れば良いのかが結構難しい所である。FFベースなんだけどエンジンとミッションは縦置き、フロントオーバーハングは少ないけど実はFFベース、しかもトルク配分は基本フルタイム(厳密に言うと前:後=4〜5:5〜6)なので考えれば考えるほど難しいモンである。が、何らかんら言っても結局は「自分で走ってみて、自分に一番合う設定がベスト」とそれを言っちゃぁお終いな今日この頃であった。