アスペルガー医師ロンの日常

医師でもあり、アスペルガー症候群当事者でもあり、更には911GT3&ロードスター乗りでもあるワタクシのささやか(?)な日常

MASTER OF THE RINGS

 今日も元気が無い、相変わらず仕事はミスりまくる。こっちは全力でやっているにもかかわらず、である。朝の寝起きが悪くて、何をやるにも気合が入らない、頑張ろうと思えば思うほどドツボにはまる。鬱の典型的な症状である。こんな時の治療法は教科書的に言えば”休む”事なのだが、仕事上そう言ってもいられない。

 こんな日がしばらく続くと、流石に上の眼も厳しくなる。いつか来るとは思っていたが、O先生に別室に呼ばれほぼ膝をつき合わせるような形で話に入った。もう何を言われても仕方が無い、そう覚悟を決めて相手の目を見ると、最初の言葉は意外にも「お前、何で脳外科になったんだ?」と。ワタクシが予想していた小言とは違う展開に。

 もちろんワタクシは、ここ(ブログ)に書かれている理由を述べたが、そこで一言「解かった、なら今のお前に何が足りないのかを教えてやる。コミュニケーション不足なんだよ、お前の場合。患者さん、患者さんの家族、コメディカルの人達、みんなとコミュニケーションが足らない。それは臨床をやる人間にとって基本中の基本なんだよ。お前が頑張っているのは分かる、お前が悩んでいることも分かっている。もっと皆の側に居ろ、もっと話をしろ、もっと自分を晒けだせ。そこから始めてみろ」

 ・・・ハッキリ言ってショックである。同じ事は大学のI助教授にも言われて、その時はワタクシもそれは無いと否定したのだが、複数の人間が同じ事を言ってきたという事は、それは的を得ているからなのであろう。ここ(茅ヶ崎)に来てからは可能な限り明るく振舞い、笑顔で応対したりしてきたのだが、やはり肝心要のの部分で心を閉ざしていたのがやっぱり他人から見ると分かるのであろう。

 やはりワタクシは、どんなに親しげに話しても「貴方は貴方、ワタクシはワタクシ」と一線を引いてきていた。今考えれば、心から通じ合って無くても良い、仕事がスムーズに進行すればそれで良い、と思っていたのだろう。あともう一言言われたのが「お前は人間と向き合っている時間よりも、機械と向き合っている時間の方が長い」と。正にその通りである。ワタクシは人間関係は機械の様にあるべきだと考え、実際自分もその様にやってきた。一番大事なのは仕事がスムーズに進行すること、人間的感情から生まれる非論理的な主観は邪魔なだけだ、と。

 でもやっぱり社会で生きて行くためには、良くも悪くも人間関係というものが欠かせないのである。どんなにドロドロしていようが、どんなにややこしかろうが、やはり人間は人間と接して初めて安心感を得られ、そこから信頼が生まれてくるのであろう。ロボット的な人間はやっぱりダメなのである、とワタクシは考える。かといって、今まで30年間こんな生き方しか知らない人間に何が出来るのであろうか。

 親しい看護士に話を聞いたら「とりあえず、世間話から始めてみれば?」と。確かにそうだ、ダメ元で試してみるとしよう。あと1年間、コミュニケーションが取れるようになるか頑張ってみよう。取れればそれで良し、ダメならI助教授にも誓ったように臨床をやめて研究の道を歩もう。ダメなものを自転車興業的に身体を精神を削って続けるよりも、スッパリと見切りをつけて一人でフラスコを振る人生を送るのも一興であろう。そうなったらこの日記のタイトルも「過眠症研究員ロンの日記」に変えなきゃいけないな、となんらかんら言いながらギャグで締める今日この頃であった。