アスペルガー医師ロンの日常

医師でもあり、アスペルガー症候群当事者でもあり、更には911GT3&ロードスター乗りでもあるワタクシのささやか(?)な日常

FOR BLOOD AND EMPIRE

 ロンマニアの皆様、こんにちはm(_ _)m


「人間は好んで自分の病気を話題にする。彼(彼女)の生活の中で一番面白くない事なのに」

By アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ


 といった今日この頃、皆様はどうお過ごしでしょうか。


 今日、出勤の際にモノホンの【レクサスLS460】見てしまったのである。こんなトコに何をしに来たのかは不明であったが、とにかく見てしまったのである。んでもって、ちょっとだけ興味が沸いたので遠めに観察する・・・やっぱり"もえ(萌&燃双方とも/笑)"ない。これがアストン・マーティンとかランボルギーニだったら実用性は置いておいても"萌え〜〜"って来るのだが、残念な事に【レクサスLS460】からはそれが感じないのである。暫く見ていたら何時の間にかクルマが発進、ここぞとばかりにエキゾースト音とエンジン音に耳を傾けると・・・・・益々持って萎えた(滅)やっぱりセルシオに毛が生えただけのクルマみたいである。これが今年の日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞車なのだから、何故RJCカー・オブ・ザ・イヤーがあるのかが分かった気がするのである。


 話は変わって、完璧にやられたのである。本来、ワタクシは人に影響されるのが嫌いな性質である。もっとも、他人に影響を及ぼすのは大好きであるが(笑)こればかりは「見事にやられた、敵(?)ながら天晴れ」である。何が天晴れなのかというと:

Rozen Maiden 1 (バーズコミックス)

Rozen Maiden 1 (バーズコミックス)

Rozen Maiden 7 (バーズコミックス)

Rozen Maiden 7 (バーズコミックス)

である。1巻からいきなり7巻に飛んだ事に気付いたロンマニアの皆様、実に鋭い。そう、言うまでもなく2巻〜6巻まで読破済みである(爆)何が凄いのかと言うと、とにかくメチャクチャ上手いのである。「DearS」の時も「あ、この作者上手いな〜」って思ったのであるが、「ローゼンメイデン」で遥かにレベルアップしているのである。因みにワタクシが「上手い」と思うのは「絵」ではなく「描写」である。


 え〜、「ローゼンメイデン」及びPEACH-PITファンのロンマニアの皆様には申し訳ないのであるが、「絵」に関しては「エア・ギア」の大暮維斗か「ブラック・ラグーン」の広井礼威の方が圧倒的に上手いと思う。特に銃とか刃物を描かせたらこの2人に敵う作家はまずいないだろうと思うほどである。ワタクシが「DearS」は読んでいても「Zombie-Loan」は読んでいなかったのは、やっぱり作品中の銃と刀の描き方を大暮維斗や広井礼威のそれと無意識に比べてしまってた点があるからなのである。で、PEACH-PITの何がメチャクチャ上手いのかというと「心理描写」である。そういう環境に遭った人なら思わず頷いてしまう、そういう特殊で細かい人間の精神描写はハッキリ言って圧巻である。


 特に1巻第1話の引きこもりの主人公とその姉の遣り取りが凄かった。あそこまでリアルに引きこもる人間の心理を巧みに描ける作家は初めてである。実際、あのシーンを見てからこの作品を気に入ったようなモンである。半分ネタバレで大まかに言うと、変な通販に凝っている引きこもりの主人公が「こういう変な事はやめよう、もっとお姉ちゃんと色々話をしようよ、そして学校行こう」って語りかけるの姉に対してブチ切れるシーンがあるのである。アレが正に典型的な引きこもりの心理であり、そういう心理を持った人間にとっては、ああいう言い方が一番アタマに来るモノの言い方なのである。殆どの人があのシーンを見て「なんてひどい弟なんだ!」と思うのだが、ワタクシ的には「ああいう言い方したらキレて当然、ワタクシだってそうする」なのである。


 ネタバレになるので細かい説明は控えるが、主人公は一般ピーポーの標準偏差25〜75(=95%)外にある人種、いわゆる"アウトサイダー"なのである。ライヴの実在人物に例えるなら、ビル・ゲイツイチロー中田英みたいに「ずば抜けているけど、一般人からすると規格外の人間」だと思えば良いと思う。このテの"アウトサイダー"というナマモノは、上記人物みたいに社会に認められればノープロブレムなのであるが、彼らのような人物はほんの一握りであり、多くはフツーの社会の中で95%を占める圧倒的多数である標準偏差内の"インサイダー"と一緒に生活しなければならない場合が殆どである。そういう場合は何せ基本的に別の世界に住んでいるのだから、やり辛い事この上ない場合が多いのである。


 で、お分かりかと思うのであるが、主人公はおよそ常人には理解不能な自らの"アウトサイダー"的な部分故に悩んで、これまた常人には理解し難い思いっきり些細な"アウトサイダー"的なキッカケで引きこもってしまうワケである。勿論、中には性根腐った正真正銘のダメ人間も少なからずいるのであるが。"アウトサイダー"の多くは言動とは逆に非常に繊細な場合が多い。その繊細さ故にとんでもない才能を発揮する場合が多いのであるが、時にはその繊細さが仇となって傷つきやすいヤツも実に多い。んで、主人公はモロに「繊細すぎるゆえ傷つきやすい"アウトサイダー"」の典型例なのである。


 そう、あのお姉ちゃんのやっている事というのは、実は主人公の"アウトサイダー"的要素を「一般常識からして理解出来ない」という理由だけで否定した上、主人公の気持ちを理解しようとせずムリヤリ主人公が拒絶している"インサイダー"の世界に引っ張り戻そうとしているのと同じなのである。インドネシアに住んだ事の無い人間がインドネシア人の国民性について語っても、モノホンのインドネシア人にとっては「何言ってんだコイツ」と思うのと同じ理屈で、自分の住んでる"アウトサイダー"の世界について何も知らないヤツが知ったような口を聞いて、自分の世界に土足で入ってくる事ほど"アウトサイダー"の神経を逆撫でする事はないのである。


 この"アウトサイダー"のリアル過ぎる描写もそうだが、"アウトサイダー"とどう向き合っていくかというやり方までリアルに描いてあるのが驚きである。ストーリーはそんな主人公の下に真紅という名の生きたアンティークドールが届く事から始まるのであるが、主人公と真紅の遣り取りがまた面白いのである。主人公が「学校なんて下らない」って言っても「良いんじゃないの」でお終い。主人公が何しようが一向にお構い無しで「下僕として、自分の力の触媒として役に立っていればOK」でお終い。その反面主人公の"アウトサイダー"的才能に対しては本心から褒める。過大評価も過小評価もせず、同じ"アウトサイダー"であっても決して相手の世界には踏み込まず、その代わり相手の良い所に対してはお世辞抜きで賞賛する。実はコレが"アウトサイダー"が一番望む人付き合いの方法なのである。


 その他、水銀燈というドールのマスターの描き方が実にリアルで生々しいのである。ネタバレで申し訳ないが、実はこのマスターは先天性心疾患を患っていて、主人公と同じ様に心を閉ざしてしまっている。んで、同じようにナースやドクターや家族に対し突っ放した態度で接する。これも見る人にとっては「何てひどいヤツだ!」となるが、これまたワタクシ的には「そりゃそーだ、分かりゃしないのに知ったかぶるから」である。病気になった人の辛さというモンは健康な人には何をどうやっても理解不可能なのである、例えそれが医療従事者であっても、である。以外かも知れないが、実は医療従事者っていう人種は病気の辛さに対してはビックリするぐらい鈍感なのである。だから病人にとってみれば「この苦しみをリアルで分からないヤツが偉そうに説教垂れるな!」って思うのもある意味当然である。


 とまぁ、この他リアルな「描写」が数多くあるのであるが、あまりにも多過ぎてココでは書ききれないので割愛させて頂こう。「NANA」なんかもそうであるが、「ローゼンメイデン」の凄い所はマジでこういう心境や状況に至ったヤツじゃなきゃ描き得ないようなモンばかりなのである。コミカルで女性的なタッチ(って言っても、作者は元々女性2人組なのだが^_^;)のほんわかした雰囲気とは裏腹に、あまりにもリアルで生々しい歪んだ心理描写。この何ともアンビバレントな表現が見事にワタクシのツボにハマってしまったのである。とは言っても、この描写が理解出来るワタクシも"アウトサイダー"なんだなぁ、と今更ながら再認識する今日この頃であった。