アスペルガー医師ロンの日常

医師でもあり、アスペルガー症候群当事者でもあり、更には911GT3&ロードスター乗りでもあるワタクシのささやか(?)な日常

ROCK ’N’ ROLL

 ロンマニアの皆様、こんにちはm(_ _)m


「私は運命の喉首を締め上げてやるのだ。決して運命に圧倒されないぞ。この人生を千倍も生きたなら、どんなに素敵だろう」

By ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン


 といった今日この頃、皆様はどうお過ごしでしょうか。


 何て言うか、考えれば考えるほど世の中というモンはワケが分からんのである。親族全体で「医者>他の職業」とかいう意味不明な図式があって、しかもそれが親族中で"常識"としてまかり通っている家族がこんなにも多いとは思わなかったのである。まるでS2000乗りの方々の車高と同じような定義である(笑)つい最近も、半年前も、そのテの家庭で三面記事モンの事件が起こったばかりである。マスコミとかの論調では「何故"家族を殺す"という最悪の選択をしてしまったか?」という定番のネタで連日のように閑々諤々やっているのであるので、あえて単純な批評は避けようと思う。


 まぁ、こんな事言うと大ブーイング必至なのは重々承知の上だが、ワタクシにはあの1連の事件の犯人の気持ちが分かるのである。彼らがどんな気持ちで日々を送っていて、その日々の中で何を考えていて、何故あんな些細な一言で常人では考えられないような事をしでかすのかが思いっきりイメージ出来てしまうである。理由は簡単、コアなロンマニアの方々なら御存知かと思うのだが、ワタクシもこういう家系で生まれ育ったからである。親が医者/歯医者で、その兄弟(つまり伯父や伯母)も医者を初めとした医療従事者で、その子供達(つまり従兄弟達)も医者ばかりなのである。そういう環境の中では「一人前=医者になる事」が何時の間にか家訓になっていて、まるで医者(医療従事者)以外の職業が下々の職業であるかのような錯覚に陥るのである。そうすると、意識しているか否かに関わらず親は子を医者にしようと四苦八苦して、子供も親に認められたいがため医者になるように努めてしまうのである。


 大概の人がこのテの話を聞くと「親が無理矢理スパルタ教育している」みたいな印象を受けてしまいがちである。確かにそういう家庭も少なくはないのであるが、多くは上記の「親族を取り巻く環境」に感化されて無意識的にそうなっているのでは、とワタクシは考えたりする。何を言いたいのかというと、子供は「親にやらされている」というよりかは「自分でやっている」場合が多いのではと思うのである。医者になることで親から大いに愛され、周囲から「一人前の大人」として持て囃される。そりゃ子供心にだって「大きくなったらお医者さんになるぞ〜」って思ってしまうワケである。今思えば、ワタクシが医学の道を歩んで一番嬉しかった事の1つが"医学部に合格した時、両親はもとより親族中から祝電が来た事"だったりするのである。あの時は自分がバリバリのナードである事を差し置いても「コレで自分も一人前だ〜〜\(^o^)/」って錯覚してしまったモンである。


 今更言うまでもない事だし、ワタクシが言っても説得力が無いのであるが(笑)医者というのはハードな仕事である。なにせ勉強する資料の数を"何冊"ではなく"段ボール箱何個分"で数える世界である(実話)それらの膨大な知識を溜め込むだけの脳ミソのメモリー容量と、それらの膨大な知識をスムーズに演算し処理するだけの計算速度、肉体的&精神的にもきつい中でも一連のプロセスを適切に行うだけの耐久力、それらが無いと医者という仕事は出来ないのである。クルマで言うならば優れたボディー構造とシャシー剛性、それを走らせるための力強くてパンチ力のあるエンジンと駆動装備、それらを高負荷やシビアコンディションの中で安定して動かせる耐久力がないとサーキットで好タイムをマーク出来ないのと同じである。


 インプやランエボGT-RNSXみたいにノーマルでもサーキットで凄いタイムを出せるクルマが少ないのと同様、フツー生活でフツーに勉強してアッサリ医学部に入れるヤツというのは実に少なかったりする。で、インプでもランエボでもGT-RでもNSXでもないスペックの受験生はどうするかといえば、他の車種がそうするように"チューニング"をするワケである。クルマでも何でもチューニングをやっているロンマニアの方なら御存知かと思うのであるが、チューニングをやると多かれ少なかれ必ずどこかに皺寄せが来る。どこかを強化すると別の場所に負荷が掛かってソコが脆くなったり、その場所を強化するとまた別の場所が・・・って感じである。ロンマニアの方々の中には「医者って何であんなにも非常識なんだ!」ってお思いの方も少なくは無いのだが、アレはチューニングの弊害である場合も多いのである。医者になるために脳ミソのブーストアップをした結果、一部の人格に負荷が掛かってガタが来たという事である。


 だからと言ってワタクシがそれを正当化しているワケではないので、誤解の無いように願う。ノーマルで素性の良いヤツや、完璧なバランスでチューニングされたヤツというのがクルマと同様で、誠に遺憾な事であるが実に少ないのである。大概は何かを犠牲にしてまでもチューニングを施して医者になる場合が多いのである。上記の様な家族だったら尚更であり、たとえサーキット走行に向かないスペックのクルマですら、必要なモノすら排除して無理矢理チューニングしてしまう事も珍しくない。ココまで書けば分かると思うのだが、上記事件の犯人というのは、他ならぬ「医者/歯医者になるためにチューニングに次ぐチューニングで、人として大事な部分に破綻を来してしまった例」だと思うのである。無理なブーストアップや過度の軽量化を試みるとエンジンがブローしたりシャシーが破損するのと同様である。


 まぁ、他ならぬ「チューニングの失敗例」の最たるモノであるワタクシがこーゆー偉そうな事を言って良いワケではないが(笑)お分かりかと思うのであるが、ワタクシの場合運良く医者にはなれたのであるが、チューニングの皺寄せでナード化してしまったのである。その結果どうなったかは今更説明の必要は無いであろう。とは言っても、ワタクシは"○×が悪い"と他人のせいにする気は毛頭無い。この道を選んだのは他ならぬワタクシ自身であるし、家族や親族から総スカンを喰らう覚悟で家を飛び出して本当にやりたい事をする勇気も無かったのも事実であるし、更に言えば"自分が本当にやりたい事"が何なのかすら現在に至るまで分かっちゃいなかったりする。関心がある事といえば「今後どうするか」だけである。そう言ってみたものの「今後どうするか」と問われても「まぁ、そんなに気張る事ぁない。やる事やってりゃ神様がケツに奇跡を突っ込んでくれる」というパクリ以外の何でもない答えしか出せない今日この頃であった。