アスペルガー医師ロンの日常

医師でもあり、アスペルガー症候群当事者でもあり、更には911GT3&ロードスター乗りでもあるワタクシのささやか(?)な日常

THE LATTER RAIN

 ロンマニアの皆様、こんにちはm(_ _)m


「哲学者たちが何と言おうと、我々の最終目標は快楽なのだ」

By ミシェル・ド・モンテーニュ


 といった今日この頃、皆様はどうお過ごしでしょうか。


*一期一会の真剣勝負

 今世間は平昌冬季オリンピックで盛り上がってる最中である。ワタクシは何だかんだ言って、オリンピックは好きである。オリンピックの何が面白いって、4年に1度の世界最高峰の大会であるって事と、スポーツ選手の全盛期って思った以上に短い事が重なる事にあるとワタクシは思うのである。つまりどういう事かと言えば「出場選手にとって、今参加してる大会が最後になるかも知れない」って事であり、ソコからその分野の達人たちの一世一代の白熱したパフォーマンスが観られるって事であり、ソレが面白いのである、故ににワタクシは【ジャマイカ代表が下町ボブスレーのソリを使わなかった】件に関しては、断然ジャマイカ側を支持する次第である。何故ならジャマイカの選手にはこの大会が全てなのであり、その為にベストを尽くす必要があるからである。



 ぶっちゃけた話、下町には次の大会があるし、別の国もあるのである。が、参加してるジャマイカの選手的には、この大会がひょっとしたら最後のオリンピックになるかも知れんのである。でもってラトビア製のソリを使えば勝てる可能性が上がるのなら、そりゃ違約金払ってでもそっちを選ぶに決まってるのである。このプロジェクトにおける主役はあくまでもジャマイカ代表であり、最重要課題はジャマイカ代表の勝利である。下町はジャマイカを勝たせて初めて「ウチの技術は世界トップなんだぞッ<( ̄^ ̄)>」って胸を張って言えるのであり、ソレが出来なかった時点で下町側の目論見は達せられてないのである。下町側は訴訟を起こすなとは言わないが、素直に負けを認めて原点に戻るべきである。


*感動はありがたくない

 ワタクシは分野こそ違えど乗りモンを使ったスポーツを嗜んでるので、この類のスポーツにおいて乗りモンがどんだけ重要なのかはソレなりに分ってるつもりである。どんなにドライバーが優れててもマシンがダメなら勝てないのは、マクラーレン・ホンダフェルナンド・アロンソがイヤと言うほど証明してくれたので、最早説明不要であろう(笑)この下町ボブスレーとやらを少し調べてみたが、そりゃ上手く行く筈が無いのである( ̄〜 ̄)製作スタッフにボブスレー経験者が一人もおらず、ソリ作りのエキスパートもおらず、他社製ソリをシッカリ研究してもいないし、テストコースも確保できてなけりゃ専属テストドライバーも居ない。最重要ユーザーであり一番甘く見てくれるはずのニッポン代表が不採用にしたって時点で、もうレベルが分かるってモンである┐(´д`)┌


 ソレに対し下町側は「ウチのソリは速いッ!」って【反論用のソレ】を出してるけど、言っちゃ何だか全然反論になってないのである。乗りモンってのはクルマでもバイクでも何でもそうだけど、シミュレーション通りに実際上手く行かない方が圧倒的に多いのである。だからマジメにやってるトコは途方もない手間と費用をかけて、各分野のエキスパートを大勢集めてテストに次ぐテストを積み重ねてるのである:

  • テストコースではドイツ製より良いタイム出してた → そのコースで良くても他で良いとは限らない
  • テストドライバーが操作性は気にならないと言ってる → 気になるかならないかを決めるのはジャマイカの選手
  • レギュレーションで3回引っかかったけど対処して万全 → 前科があるんだから一発で通らなきゃNG
  • 良いソリを作っても採用されない → ニッポン代表もジャマイカ代表もダメなソリだと言ってて、ソレが全て

もうこの反論読んだだけで、ワタクシは「あぁ、このソリ作った連中は、乗りモン使ったスポーツの事を何も理解してねぇな┐(´-`)┌」って分かってしまったのである。モタスポやってるロンマニアの方ならば分かると思うが「一発勝負で速いマシン」と「レースで勝てるマシン」は全く別モノなのである。開発者の中に関係者が居れば分かる話なんだけど、居ないからこういう事になってるのである。


 でもって今回のラトビア製のソレもだけど、世界中で代表選手が使うソリってのは、当然そういう過程を経て実績で証明されたモンなのである。ソレをやらないで「大田区の技術は世界一だから」で勝とうだなんて、ボブスレーというスポーツをバカにするにも程があるってモンである┐( ̄ヘ ̄)┌だからニッポン代表に2回も不採用喰らった時点で素直に「我々には技術がありませんでした」って認めて、素直に他所のソリを分解研究したり、国代表ではなく草の根レベルの選手の支援から始めて実績を積み上げるべきだったのである。ムリヤリ出場して「下町ソリがオリンピックを走りました、勝てませんでした、感動をありがとう」じゃ、バンシーですら泣きたくても泣けないってモンである(笑)


*ニッポンのモノ作りの終焉?

 この下町ボブスレーの件といい、マクラーレン・ホンダのソレといい、ワタクシが感じたのは「あぁ、ニッポンのモノ作りはもう世界一じゃなくなったんだなぁ(´△`)」って事である。まだ制作技術が進化してなかった昔ならば、ニッポン人の勤勉さや器用さがモノ作りにおいて最大限に活きた事であろう。が、今はもうネット時代の21世紀である。CNCだとか3Dプリンターだとかが出てきて熟練職人と大差なくなってきて、その上周囲の国々の職人のレベルも上がってきてるのである。そんな中で「我がニッポンのモノ作りは世界一ィィィ!」と叫んだって、ソレだけじゃ説得力は生まれないのである。もうモノ作りに人間が占める割合は時を追うほどに減っていってるんだから、ソレに合わせなきゃやってけないに決まってるのである。


 あともう一つ感じたのは、ニッポンのモノ作りにおけるマーケティングのヘタさ加減である。何ちゅーか、ニッポンのモノ作りをPRしたいヤツってのは、殆ど昔のイメージの延長でやってるのである。即ち「ニッポン製品は安くて高性能で壊れない」のソレである。が、今は技術の進歩によって精度は無くてもソフトウェアで差をつけられたり、或いは中国やその辺りの精度は低くても超低価格攻勢で負けてたりとか、ニッポンの誇る「モノ作りの緻密さや精巧さ」ってヤツが商品になってないのである。売れるモンが必ずしも良いモンだとは限らないが、売れなきゃ会社も工場も潰れてしまって、世界一の技術もへったくれも無いのである。さて、何だかんだ明日も速いので、コレぐらいにしておこうと思う今日この頃であった。