アスペルガー医師ロンの日常

医師でもあり、アスペルガー症候群当事者でもあり、更には911GT3&ロードスター乗りでもあるワタクシのささやか(?)な日常

THE WORLD WE LEFT BEHIND

 ロンマニアの皆様、こんにちはm(_ _)m

「人間はなんといっても不合理だ。人間は自分の持っている自由は決して行使しないで、自分の持っていない自由を要求する彼らは、思索の自由を持っているが、表現の自由を要求する」
By セーレン・キルケゴール

 といった今日この頃、皆様はどうお過ごしでしょうか。


*現実主義者vs理想主義者
 数年前の話である、某記事に「ラッシュアワー時に赤ちゃんをベビーカーに載せて電車に乗るのはアリかナシか」ってって議論に対し、ワタクシは「ラッシュアワーを避けて電車に乗るか、或いはクルマ通勤にすべし」と答えたのである。確かに満員電車の人達が自主的に降りて開けてくれるのが理想だけど、現実はそうはいかないモンである。正しいという事と納得できるという事は別の話であり、そして人間は理論よりも感情でより強く動く。だから先ずは理想から離れてても良いから互いの妥協点を見つけて、ソコから徐々に理想へ向けて少しずつ歩み寄っていけば良いってのがワタクシの考えなのである。


満員電車のベビーカー問題【池袋なう】

 その事をSNSでところ、とあるサヨクいヤツに批判リプが来たのである。ワタクシは上記の考えを元に「ンな事言っても現実はそう簡単に変わらない」って言ったんだけど、ソイツは「現実がおかしい、正しいやり方に現実の方が従うべきだッ!」って返してきたのである。ワタクシは「どうやって?人々の心を一瞬にして変えれるような魔法の杖でもあるの?」と聞いたのだが、ソイツの答えは「そんなモン無いッ!正しい事なんだからそうするべきなんだッ!」って繰り返すだけである。最後の方でソイツは「貴方がどう反論しようとも、私の考えは変わらないッ!」って言ってきたので、ワタクシは「そんな貴方の考えをワタクシは尊重します」と返してお終いである。

*現実には限界がある
 ソレと同じ事を、今回起こった【ニッポンを侮辱したサヨクい展覧会が中止に追い込まれた】件についても言う次第である。確かに全ての言論の自由は保証されるべきだし、ソレを侵害しようとするヤツは処罰されるべきなのである。が、現実はそうはいかないってモンである。どんな対象だってソレを崇拝するヤツは必ず居るし、ソレをバカにされたら理性で考えるよりも先にキレてしまうし、キレたヤツの中にはテロ的行為に出るヤツも極少数ながら出てくるワケである。で、警察はそういうヤツから100%完璧に表現者を守り切れるであろうか。答えは「ノー」である。人権云々があるから警察は奥の奥まで踏み込めないし、警察が動くのは常に事が起こった後だからである。


テロ予告や脅迫も 「表現の不自由展」の中止で(19/08/05)

 そう、表現の自由を行使するって事は、そういう最悪の可能性を想定した上で行わなければいけないのである。例えばムハンマドコーランを揶揄するような表現をしたら、問答無用でイスラム原理主義過激派のテロリストが鉄砲と爆弾を携えてやって来るであろう。ソレは誰がどう考えても間違ってる事であるが、でも現実である。だからイスラムイスラム社会を揶揄したいのであれば、現実的に妥協した表現にならざるを得ないのである。たとえ「表現の自由を脅かす敵から表現者を守ってくれなかったッ!」といって国や警察をどんなに責めたとしても、テロリストの自爆攻撃で木っ端微塵になってしまった人はもう二度と帰ってこないのである。


哀しみに暮れるパリ① シャルリー・エブド襲撃事件

哀しみに暮れるパリ② シャルリー・エブド襲撃事件
 
 そう、表現の自由を行使するって口で言うのは簡単だけど、実際にやるのは大変なのである。流石にイスラム過激派のソレは極端な例だけど、何か特定のモンを鋭く攻撃する表現ってのは、その相手からの反撃を覚悟しておかなければならないのである。だから安易に何かをボロクソ扱き下ろすようなヤツってのを、ワタクシは殆ど全く評価してないのである。そういうヤツは表現の自由の怖さを分かってないバカか、相手から反撃されないからやってる卑怯者か、或いはその双方だからである。表現の自由は万能ではない。表現の自由を行使するのであれば、その事を決して忘れてはならないのである。

*正義の反対はまた別の正義
 この件の何が問題って、確かに表現の自由が侵害された事もそうであるが、もう一つは「物事を善悪二元論で捉えてる事」にあるとワタクシは思うのである。この事で主催者側を擁護するヤツの多くは「主催者は正しい事をしてるんだから、過激な表現も真摯に受け止めろ」って認識が強い事である。左だけでなく右側からの過激な表現があってもいい筈だと思うんだけど、何故だかソレが無い。何故そうなるかって、主催者が「右側の意見は悪」って決めつけちゃってるからである:

  • 我々の考えは正しい
  • 我々の考え通りに世の中を作れば、きっと全てが素晴らしい理想郷となる筈
  • 人々が「正義とは何か」を考えれば、きっと我々と同じ考えに至る筈
  • だから我々以外の思想の話を聞く必要なんてない
  • 正しい事なんだから、ソレを人々に伝えるために過激な方法を取ったとしても許されるべき
  • 正しい事を行った人の方法論が間違ってたとしても、その事を批判すべきではない
  • 強引に押し付けたとしても、結果的に良い方向になるのならば問題無い

という考えで主催してるのであるから、右側の表現なんて出てくる筈が無いのである。上記のワタクシのSNSカキコに凸してきたヤツも、恐らくこういう考えだったのであろう。だからワタクシは「どうせ分かり合えないけど、でも貴方がそういう考えを持つ権利はあるのだから、他者の権利を侵害しない限りワタクシはソレを尊重する」と答えた次第である。

 でもって繰り返し言うが、ワタクシはそのような善悪二元論を認めない次第である。何故ならその思想の行き着く先は、必ずと言って良いほど「自分等以外の思想の人間は皆滅ぼしてしまえ」になるからである。だってその方が余計な妥協も話し合いも不要だし、極めて”合理的”だからである。その事はワタクシが説明するまでもなく、古今東西の歴史が証明していることである。自由ってのは絶え間無い理想と現実のすり合わせと、自分や自分の仲間の身を守る為の不断の努力から成り立っており、故に「Freedom is not free(自由はタダではない)」と呼ばれているのだという事を再認識した今日この頃であった。

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