アスペルガー医師ロンの日常

医師でもあり、アスペルガー症候群当事者でもあり、更には911GT3&ロードスター乗りでもあるワタクシのささやか(?)な日常

SINISTER SLAUGHTER

 ロンマニアの皆様、こんにちはm(_ _)m

「変化というものは、伝統を変えるものではない。むしろ、それを強めるもの」
By エディンバラ公爵フィリップ王配

 といった今日この頃、皆様はどうお過ごしでしょうか。

*伝統って何ですか?
 サブタイの答えはワタクシが思うに「最適化という形で進化した元祖」といったトコであろうか。でもって肝心なのは「元祖の良し悪しは問わない」ってトコである。最初の形は何であれ、生き残るにあたって様々な最適化を成されながら現代まで残存し続けて、残存したモンのコア部分こそが「伝統」なのである。コア部分の良し悪しも全て「個性」であり、損得勘定や理屈抜きで「生き残り続けた」事が人を魅了するのである:
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ワタクシがしょっちゅう用いてるこのライガーの動画であるが、このライガーの言葉ほど「伝統とは何か?」を分かり易く説明してるモンは無いと思うのである。先ず元祖があって、その元祖の思想や哲学をシッカリ受け継いで進化させるから、良いか悪いかじゃなく「ソレにしか成し得ないモン」が誕生するのである。ただ良いだけのモンは更に良いモンに駆逐される運命にあるのである。

 クルマで分かり易く言うと、ポルシェ911が正にソレである。当初の「水平対向エンジン&RRレイアウトを持った理想のGTカー」を元祖に持ち、元祖のネガを打ち消す為に各種新技術を色々編みだしたり凄まじい精度でのモノ作りをしたり等々、そういうのを積み重ねていく度に欠点は個性になり、人々に愛されるようになるのである:
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そう、911があのレイアウトなのは、ドイツの歴史とポルシェ博士のルーツがそうさせているのである。ソレがポルシェというメーカーの「元祖」であり、ソレをあの手この手で続けるからこそ他のメーカーには無い独自性と技術が生まれるのであり、ソコから生まれた唯一無二のクルマをワタクシみたいなクルマバカが大金出して買うのである(笑)911より優れたクルマは数多くあれど、911みたいなクルマはポルシェにしか作れないのである。

*元祖を失った二代目
 話は変わって、ホンダというメーカーの元祖は何処にあるって、言うまでもなく本田宗一郎である。本田宗一郎が戦後ニッポンに於いて「戦後の貧しいニッポンにガチのモータリゼーションをッ!」「欧米の様にネームバリューは無くても工夫と技術で素晴らしいクルマをッ!」って思想から始まった、正に「本田宗一郎という傑物と戦後ニッポンという時代背景から生まれた個性」なのである:
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そう、ホンダというブランドの根底にあるのは「庶民の為のクルマ」であり「技術での下克上」なのである。ベンツやフェラーリみたいにハナッから上級国民向けだったワケでもなく、ポルシェみたいに通向けのブランドから始まったワケでもないのである。

 ワタクシが思うに、初代NSXの凄さってのは世界初のアルミモノコック等々もそうだけど、やっぱ「ホンダというブランドを体現したクルマだったから」だと思うのである。ホンダらしい革新技術を用いてる事や、従来のホンダスポーツカーの延長線にあるクルマ作りもだけど、一番はやっぱ「一般庶民が思いっ切り背伸びすればギリギリ届く価格だった」って事である:
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当時のフェラーリやポルシェよりも速いクルマが、800諭吉という超バーゲンプライスで買える。そりゃ少年時代にスーパーカーブームを体験してた大人達が「コレからはニッポン車の時代だッ!ホンダが世界を制するんだッ!」興奮して注文が殺到→納車5年待ちになる筈である(^_^;)上記ライガーの言葉を借りると「コレがホンダ最高のクルマです、コレでホンダを世界一にするぞ」ってのを体現した「すげぇクルマ」が初代NSXだったのである。

 こう書くと、二代目の何がダメだったかが良く分かるであろう。そう、二代目は初代とは違い、ホンダの元祖に根差していないのである。従来のホンダ車との延長線が見当たらないし、一般的なホンダ乗りやホンダファンが手を伸ばせば届く値段でもないし、何より初代からの連続性が全く無いのである。確かに「良いクルマ」なんだろうけど「すげぇクルマ」じゃないからである:
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何故こうなったかって、初代から地道にコツコツと「元祖に根差した最適化と進化」を成してないからである。ただ単純に最新技術各種を組み込んだだけじゃチグハグになるなんてのは当たり前の事であり、こういうのは一つずつ地道に合わせていくっきゃないのである。ブランドを構成する上で最も重要なソレを怠ったんだから、二代目NSXは「すげぇクルマ」になり様が無いのである。

*あの興奮をもう一度
 じゃあNSXと同じように長いブランクから復活した&同じように先代とは相当変わってるのに、R35GT-Rは何故成功したって、答えは簡単である。ソレはズバリ「速かったから」である。実質世界的には無名で、皆から新技術を疑問視されてるモンがどうすれば皆を納得させられるかって、答えは「実力で示す」である。無名の新人選手が名を上げようと思ったら、デビュー戦でハデに活躍するしか方法が無いのである。R35は発表と同時にニュル北でのタイムを公開し、当時開発責任者だった水野和敏氏が様々なメディアに出て熱弁を奮ったからこそ、多くの人が新技術や新ブランドを信用したのである。

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 そう、1990年のNSXデビュー時にクルマ好きが味わった興奮とワクワクを、水野氏&日産は見事に再現して見せたのである。そりゃクルマ好き達は大興奮したし、そしてその大興奮したクルマ好きの中にはワタクシも含まれてたのである(笑)そう、二代目NSXは初代があったとはいえスーパーカーとしては新参モンであり、界隈でのブランド力は皆無であり、その上同郷のR35と比べられるのである。だから皆を納得させるためには、ニュル北でR35以上のタイムを出す必要があったのである。ユニクロしまむらに50諭吉の上等なスーツがあっても、場違い過ぎて誰も買わない。当たり前だけど改めて言う今日この頃であった。.